脂質異常症

「脂質異常症」ってなに?

これまで使用されてきた「高脂血症」「高コレステロール血症」とほぼ同義です。血清の脂質が異常値を示すことをいいます。血中の脂肪分はいくつかのタイプに分けられ、正常では、

  • LDL-コレステロールが140mg/dL未満
  • HDL-コレステロールが40mg/dL以上
  • トリグリセライド(中性脂肪)が150mg/dL未満

となります。この三つの値のいずれかがこの範囲をこえた状態が、脂質異常症です。脂質異常症の治療を受けている総患者数は206万2,000人(厚生労働省調査・平成26年)といわれています。

脂質異常症は血管の病気と深いかかわりがあり、とくに「悪玉」といわれるLDLコレステロールを高いまま放置しておくことは、脳や心臓の病気(脳梗塞や心筋梗塞など)を引き起こす可能性が高くなり、よいこととはいえません。

脂質異常症の種類?

脂質異常症は異常値別に、大きく上記の3タイプに分けることができますが、重複することもよくあります。また、成因でみると、高血圧症と同様に、ほかに原因のない原発性脂質異常症と、甲状腺機能などのホルモン異常、膠原病や薬剤、ネフローゼという腎疾患などを原因とする二次性があります。さらに詳しく、上昇したリポ蛋白、アポリポ蛋白の種類の上昇のパターンから分類される(WHO分類・1~5型)こともあります。

コレステロールが高い家系というけれど?

実際に家系はありえます。「家族性高コレステロール血症」という病気は、遺伝子の変異によっておこる遺伝性の病気で、早期からLDLコレステロールが上昇するため、血管の病気をおこしやすい病気です。そのため、早い段階からしっかりとした治療介入が必要となります。すでにLDL高値で治療を受けている方の8.5%が実は家族性といわれており、まれな病気ではありません。皮膚や腱にLDL由来の黄色腫、また眼には角膜輪という黒目の白い縁取りがみられるのが特徴です。

検査・治療のすすめかた

はじめて脂質異常症を指摘された場合、またはすでに脂質異常症治療をしているものの複数の内服薬でもコントロールが不良の場合、二次性、原発性の分類や型の分類のためのくわしい検査を行います。その後、食事・運動などの生活習慣の見直しをアドバイスし、薬物治療をおこないます。

【おこなう検査】

  • 採血
  • 尿検査
  • 血管年齢
  • 頚動脈超音波検査
  • 心臓超音波検査
  • 腹部超音波検査
  • 心電図検査
  • 胸部レントゲン検査

治療目標値

以下の疾患の既往、リスク因子でLDL-Cの目標を設定します。(*現在は2012年版のガイドラインに基づき、リスク分類され、目標を設定しますが、ここではわかりやすくするために2007年度版ガイドラインを表示します)

①心筋梗塞や狭心症など冠動脈疾患にかかったことがある
⇒LDL-C:100mg/dL未満

②糖尿病・脳梗塞・閉そく性動脈硬化症と診断されたことがある
⇒LDL-C:120mg/dL未満

③以下のリスク因子の該当する数別に

  1. 男性で45歳以上
  2. 女性で55歳以上
  3. 高血圧症
  4. 耐糖能異常(「糖尿病になりかけ」といわれた)
  5. 喫煙
  6. 冠動脈疾患の家族歴
  7. HDL-C:40mg/dL未満

⇒3個以上該当⇒120mg/dL未満
1~2個該当⇒140mg/dL未満
該当しない⇒160mg/dL未満

TGは150mg/dL未満、HDL-Cは40mg/dLを目指します。

Q&A

禁煙、血圧・肥満・血糖を是正するよういわれたのだけど?

肥満と脂質異常症は密に関係しています。とくに中性脂肪(TG)が高く、耐糖能異常(=「糖尿病になりかけ」)があると内臓脂肪型肥満となりやすく、この状態が続くと、「超悪玉」とよばれるsmall dense LDLコレステロールを増やすという、負の連鎖がおきます。超悪玉はその名の通り小型で血管壁に入り込みやすいため、動脈硬化の原因となります。そのため肥満、血糖の是正が大切です。また、喫煙・血圧に関しても同様です。脂質異常症にくわえ、高血圧・糖尿病・喫煙が動脈硬化の危険因子といわれています。喫煙により、活性酸素が産生され血管壁を傷つけ動脈硬化を進行、HDL-Cが減少、LDL-Cが増加しますし、また糖の代謝においては、「アディポネクチン」という善玉のホルモン分泌を抑えてしまい、耐糖能異常が悪化するともいわれています。

以上のように、脂質異常症単独を治療する、というよりは血管を守るために生活習慣すべてを見直す姿勢で治療にのぞむとよいでしょう。


更年期になってから数値が高くなった気がする!?

十分にあり得ることです。女性ホルモン(エストロゲン)は血中の悪玉コレステロールを肝臓に取り込む受容体を増やす働きがあります。更年期以降エストロゲンが減少すると、この受容体も減少するため、血中の悪玉コレステロールが十分に回収されにくくなり、更年期前に比べ、約20%コレステロール値が上昇するといわれています。


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